生命医科学研究科生命医科学研究科

分子エピゲノム科学研究室

分子エピゲノム科学研究室

概要

様々な環境因子に晒されながらも生体が恒常性を維持できる仕組みについて、さらにそれらの破綻が疾患にいたる過程について、エピゲノム、細胞生物学、免疫学、メタボロミクス、ケミカルバイオロジーなどを組み合わせた領域横断的な研究をしています。生命現象や疾患をエピゲノム制御の観点から理解し、炎症を基盤病態とする疾患の新しい治療法の開発を目指します。

スタッフ

大学院客員教授 眞貝 洋一(しんかい よういち)

<略歴>
順天堂大学大学院医学系研究科博士課程修了(1990年)医学博士。1998年京都大学ウイルス研究所助教授、2003年同教授、2011年から理化学研究所眞貝細胞記憶研究室主任研究員。
<メッセージ>
当研究室では、エピジェネティクス制御の観点から生命現象を理解することを目標に研究を行っています。このような研究を行うことで、健康とは何か、病気はどうして起きるのか、といったことの理解に繋げ、さらに病気を予防・診断したり治療したりする手だてに貢献できないかとも考え、研究しています。

大学院客員教授  有田 誠 (ありた まこと)

<略歴>
東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了(1997年)薬学博士。2007年から東京大学大学院薬学系研究科准教授。2014年から理化学研究所統合生命医科学研究センター(IMS)メタボローム研究チームリーダー
<メッセージ>
生体内には多くの種類の脂肪酸が存在し、その質の違いや代謝バランスの変化が、様々な炎症・代謝性疾患の背後に潜む重要な要素であることが示唆されています。私たちは、脂質代謝バランスと病態との関連を捉えるためのメタボローム解析を中心に、炎症を制御する創薬標的分子の同定を目指しています。

大学院客員研究員 池田 和貴(いけだ かずたか)

<略歴>
名古屋市立大学大学院薬学研究科博士前期課程修了(2006年)、薬学博士(2010年)。2011年から慶應義塾大学先端生命科学研究所特任助教。2014年から理化学研究所統合生命医科学研究センター(IMS)メタボローム研究チーム上級研究員
<メッセージ>
脂質は、生体防御に関わる重要な要素だけでなく、その代謝異常による様々な疾患との関連性についても注目されています。これらの生命現象を詳細に捉えるために、高網羅的かつ高感度なメタボローム解析の技術開発やバイオマーカー探索に取り組んでいます。

研究内容

21世紀の生命科学は、これまでの個別の分子に着目した生物学から、網羅性の高いオミックス情報を使った相互作用ネットワークの解析を通して、様々な環境因子やストレスの中で生体恒常性が維持される仕組みを理解しようとする総合科学へとシフトしています。また、メタボロミクスやケミカルバイオロジーなどの新しい技術の進歩により、生体恒常性の維持機構について深く理解するだけでなく、恒常性の破綻に起因する各種疾患の病態解明、および新しいバイオマーカーや治療法の開発を目指す研究の重要性が高まっています。
 当研究室では、生体恒常性の維持機構として、一旦生じた炎症が適切に収束するための分子メカニズムについて、とくに脂質代謝系による制御機構についての研究を行っています。これまでに、アラキドン酸やEPA, DHAなどに由来する脂質メディエーターに炎症を正や負に制御する活性が見いだされており、これらの活性代謝物がいつ、どこで、どれだけ生成しているのかを包括的に捉えるための高感度一斉定量分析システムを確立しています。このような背景のもと、様々なバイオロジーや病態の背後に潜む分子メカニズムを、脂肪酸代謝バランスの変化、および活性代謝物による細胞機能制御の観点から明らかにしたいと考えています。
 遺伝子発現のエピゲノム記憶は、遺伝子そのものの変異ではないので、加齢やストレスなどの要因によって変化しうるものです。エピゲノム調節の分子機構を理解し、また、エピゲノム調節に関わる化学修飾のネットワークによって、多様な生命機能が制御される原理を理解し、その制御が不全になることで様々な疾患が惹起されることを解明することで、エピゲノム制御の観点からの治療法の開発や創薬につなげるための基礎研究を行っています。

主要文献(Selected Publications)

Endo J, Sano M, Isobe Y, Fukuda K, Kang JX, Arai H, Arita M.18-HEPE, an n-3 fatty acid metabolite released by macrophages, prevents pressure overload-induced maladaptive cardiac remodeling.J Exp Med 211,1673-1687 (2014)

Tani Y, Isobe Y, Imoto Y, Segi-Nishida E, Sugimoto Y, Arai H, Arita M.Eosinophils control the resolution of inflammation and draining lymph node hypertrophy through the proresolving mediators and CXCL13 pathway in mice.FASEB J 28, 4036-4043 (2014)

Kubota T, Arita M, Isobe Y, Iwamoto R, Goto T, Yoshioka T, Urabe D, Inoue M, Arai H.Eicosapentaenoic acid is converted via omega-3 epoxygenation to anti-inflammatory metabolite 12-hydroxy-17,18-epoxyeicosatetraenoic acid.FASEB J 28, 586-593 (2014)

Shimazu, T., Barjau, J., Sohtome, Y., Sodeoka, M. and Shinkai, Y*. Selenium-based S-adenosylmethionine analog reveals the mammalian seven-beta-strand methyltransferase METTL10 to be an EF1A1 lysine methyltransferase. PLOS ONE 9(8), e105394. doi: 10.1371/journal.pone.0105394 (2014)

Shinkai, Y. and Tachibana, M. H3K9 methyltransferase G9a and the related molecule GLP. Gene Dev. 25:781-788(2011)

研究部門