生命医科学研究科
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生体機能医科学研究室

生体機能医科学研究室

概要

生体の機能は、様々な環境変化に対応できるように発揮されたり調節されたりします。私達は、遺伝情報や蛋白質がどのように調節され機能するかについて、1)神経系の発生・再生の機構、2)遺伝子の発現調節機構、3)細胞骨格因子の構造と機能、といった課題を挙げ、生物学の根本的命題の解明や、医学・医療への展開に向けて追求しています。特に、1)では自らが発見したLOTUSという神経再生促進物質を利用した神経再生医療技術の創成について、2)では遺伝情報の読み出しの仕組みの理解と、その破綻によって起きる疾患(糖尿病、癌など)の克服について、3)では細胞分裂の中心的役割を担う微小管について、力点を置いた研究を展開しています。

スタッフ

教授 竹居 光太郎(たけい こうたろう)

<略歴>
東京大学大学院理学系研究科博士課程満期退学(1988年)理学博士。1989年から日本学術振興会特別研究員を経て慶應義塾大学医学部助手。1992年からハーバード大学研究員。2002年から横浜市立大学医学部准教授。2013年から現職(横浜市立大学医学群生体システム医科学系教授、および大学院生命医科学研究科教授)。
<メッセージ>
神経系の発生(神経回路形成)と再生(神経回路修復)の分子機構の研究を行っています。発生過程の現象を成体で再現させて神経再生を試みる新しい再生医療技術の創成を目指し、自らが開発した機能的スクリーニング法で発見した“LOTUS”という再生促進因子の生理機能を利用した再生医学的研究を展開しています。一方で、光を使った分子機能阻害法(CALI法、FALI法)を技術改変した新しい分子機能解析法を駆使し、細胞局所領域における分子の役割を解析するなどの分子細胞生物学的研
究も行っています。

准教授 片岡 浩介(かたおか こうすけ)

<略歴>
東京大学大学院理学系研究科博士課程修了(1994年)理学博士。1994年から東京大学医科学研究所・癌ウイルス研究部・助手。2000年から東京工業大学・フロンティア創造共同研究センター・助手。2003年から奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科・准教授。2013より現職(大学院生命医科学研究科准教授)。
<メッセージ>
分子生物学と生化学を基盤に、培養細胞や遺伝子改変マウスを駆使して、疾患の分子基盤の解明を目指します。最先端研究を展開しながら、単に実験技術を習得するのではなく、科学的・論理的思考を身につけ、研究計画の立案から実行までを行える総合力のある人材の育成を目指します。また、研究分野以外の道でも大切な文章表現やプレゼンテーション能力の習得・向上にも重点を置きます。

准教授  林 郁子(はやし いくこ)

<略歴>
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(1997年)、博士(工学)。1996年より日本学術振興会特別研究員、1997年生物分子工学研究所博士研究員、2000年バーナム研究所(米国カリフォルニア)博士研究員、2002年トロント大学オンタリオがん研究所(加国オンタリオ)博士研究員を経て現職(大学院生命医科学研究科准教授)。
<メッセージ>
細胞分裂・染色体分配の中心的役割を担う微小管関連タンパク質群について研究を行っています。結晶構造解析、生化学、分子生物学、細胞生物学的手法によって、微小管細胞骨格による細胞内ダイナミクスの分子制御メカニズムを解明することを目指しています。

研究内容

1)神経系の発生と再生の機構の解析(竹居)

私達は光照射分子不活性化法(CALI法)の簡便型改変法を開発し、中枢神経系の器官培養標本に適用してマウス嗅覚情報投射路形成に関わる新規の軸索誘導分子Lateral Olfactory Tract Asher Substance (LOTUS)を同定しました。更にこの分子の結合分子として、中枢神経系の再生を困難にするNogo 受容体を同定し、LOTUSはNogo受容体の機能をブロックするアンタゴニスト活性が発生過程において重要な機能として発揮されることを見出しました。LOTUSは5種あるNogo受容体のリガンド分子(Nogo, MAG, OMgp, BLyS, CSPG)を全てブロックすることからLOTUSは神経再生に奏効すると考え、種々の神経障害モデル動物(脊髄損傷モデル、脳梗塞モデル、実験的アレルギー性脳炎モデル)において、LOTUSを用いた再生医療の確立に向けた再生医学的研究を行っています

2)細胞機能の維持機構とその破綻による疾患の解明(片岡)

体を構成するさまざまな細胞の機能は、特異的に発現する遺伝子群が支えています。その発現をコントロールするのは、それぞれの細胞で働く転写制御因子です。私達は、膵島β細胞(インスリンを分泌し、血糖値を下げる)の新規転写因子を発見し、MafAと命名しました。MafAは他の転写因子(Pdx1やBeta2)と恊働してβ細胞の機能を支えています。特定の転写因子の組み合わせがiPS細胞を生み出すように、これらの転写因子群はβ細胞を生み出すリプログラミング技術にも応用されています。また2型糖尿病の病態・要因であるβ細胞の機能不全の原因は長年にわたって不明でしたが、MafAの活性調節の仕組みが破綻してMafAの量と機能が低下することが大きな問題であると分かってきました。転写因子の機能の研究は疾患の分子基盤の理解に欠かせません。MafA/膵島β細胞/糖尿病の他に、MafB/副甲状腺/カルシウム代謝疾患などを対象にした研究を展開しています。

3)細胞分裂を司る微小管細胞骨格因子の構造機能解析(林)

細胞骨格因子は繊維状構造をとるタンパク質群からなり、細胞の形や強度を保つばかりでなく様々な生体機能の維持にも関与します。なかでも微小管細胞骨格は、染色体分配や細胞移動、小胞輸送にも深く関わり、その機能不全により細胞のがん化がひき起こされます。私達は、微小管と細胞小器官とをつなぐ微小管伸長端集積タンパク質とよばれる分子群に注目して研究を行っています。また原核生物の細胞分裂や遺伝子分配に関わるチューブリン相同タンパク質について、その分子機構を明らかにすることで感染症に対する分子基盤を築くことを目指しています。主な課題は:1)微小管伸長端結合タンパク質の結晶構造解析と微小管反応の生化学的解析。2)病原性微生物の毒素遺伝子分配に関わるタンパク質群の構造機能解析

主要文献(Selected Publications)

‣ Kawakami, Y., Kurihara, Y., Saito, Y., Fujita, Y., Yamashita, T., and Takei, K. The soluble form of LOTUS inhibits Nogo receptor-mediated signaling by interfering with the interaction between Nogo receptor type 1 and p75 neurotrophn receptor. Journal of Neuroscience, 38(10): 2589-2604 (2018).
‣ Hirokawa, T., Zou, Y., Kurihara, Y., Jiang, Z., Sakakibara, Y., Ito, H., Funakoshi, K., Kawahara, N., Goshima, Y., Strittmatter, S.M., and Takei, K. Regulation of axonal regeneration by the level of function of endogenous Nogo receptor antagonist LOTUS. Scientific Reports, 7:12119/ DOI:10.1038/s41598-017-12449-6 (2017).
‣Iwaoka R and Kataoka K. Glucose regulates MafA transcription factor abundance and insulin gene expression by inhibiting AMP-activated protein kinase in pancreatic β-cells. J. Biol. Cheml. 293:3524-3534 (2018).
‣Miyai M, Hamada M, Moriguchi T, Hiruma J, Kamitani-Kawamoto A, Watanabe H, Hara-Chikuma M, Takahashi K, Takahashi S, and Kataoka K. Transcription factor MafB coordinates epidermal keratinocyte differentiation. J. Invest. Dermatol. 136:1848-1857 (2016).
‣Maki T., Grimaldi A. D., Fuchigami S., Kaverina I., Hayashi I. CLASP2 Has Two Distinct TOG Domains That Contribute Differently to Microtubule Dynamics. J Mol Biol. 427: 2379-2395 (2015).
‣Grimaldi AD, Maki T, Fitton BP, Roth D, Yampolsky D, Davidson MW, Svitkina T, Straube A, Hayashi I, Kaverina I. CLASPs are required for proper microtubule localization of end-binding proteins. Dev Cell. 30, 343-352 (2014).

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