HOME > イベント > バイオエキスパート研究体験シリーズ > 平成27年度バイオエキスパート研究体験シリーズ > 開催予定プログラムと開催日 > 質量分析による脂肪酸の質の違い(リポクオリティ)の解析(5月30日)
質量分析による脂肪酸の質の違い(リポクオリティ)の解析
プログラム担当研究室
- 分子エピゲノム科学研究室
生体内に含まれている脂質・糖・アミノ酸などの膨大な代謝物の総体を“メタボローム”といい、これらを網羅的に解析する手法として、質量分析計 (MS) を用いた高感度なメタボローム解析技術が近年急速に発達してきています。
当研究室では、脂質が生体内でどのように変動・分布しているのかに注目し、これらを網羅的に探索するために、世界最先端のメタボローム解析システムを確立しています。脂質の多くが様々な脂肪酸から構成されており、脂肪酸自体は飽和と不飽和、さらに不飽和度の高い多価不飽和脂肪酸などに大別されます (図1)。
多価不飽和脂肪酸のなかでも分子内の二重結合の位置によって、オメガ6系やオメガ3系の脂肪酸が存在しており、これらは哺乳動物の体内において相互変換されることはなく、代謝的に質の異なる脂肪酸です。最近、このような脂肪酸の質 (リポクオリティ) の違いや代謝バランスの変化が、炎症を基盤病態とするさまざまな疾患において重要であることや、さらに生体内には脂肪酸の質の違いを認識して応答する機構が存在することが次第に明らかになってきています (図2)。
本講座では、ヒトの体内で脂質バランス変化の要因となる肉類・魚類・植物油に着目し、それぞれ脂肪酸の抽出操作をして、最新の液体クロマトグラフィー質量分析計 (LC-MS) でメタボローム解析を行います。アラキドン酸・EPA・DHAといった脂肪酸の質 (リポクオリティ) の違いを見分ける分析技術を体験し、これらの栄養要因に含まれる脂肪酸バランスを調べます。また、脂肪酸がヒトの健康に及ぼす影響についても考察を加えたいと思います (図3)。