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組織再生と組織培養による精子形成(6月7日)
プログラム担当研究室
- プロテオーム科学研究室
iPS細胞の開発により、再生医学は一挙に進展しつつあります。一方で、臓器や組織を培養する技術の歴史は古いものの、いまだ立ち遅れている研究領域です。組織の再生と組織培養の技術が組み合わされれば、再生医学はますます発展すると考えられます。本講座では、マウスの精子形成をモデルにして組織培養の実際を紹介し、組織再生も合わせて実習します。
組織片の培養(マウスの精巣)
精子形成は、精子の元の細胞(精子幹細胞)が精子になるまでの現象です。雄の精巣内でほぼ生涯に亘って継続されています。精巣は陰嚢内にありますが、通常の体温よりも少し低い温度(34℃くらい)になっています。その環境下で精子幹細胞は増殖を繰り返してその数を増大させ、つぎに減数分裂をして染色体の組み換えを行い、最後にダイナミックな形態変化を遂げて精子になります。この全過程はマウスでは35日間を要します。これと同じことを培養下で行う場合も、やはり培養器を34℃に設定し、培養期間も35日間が必要です。
組織像の観察(生体と培養の比較)
精子形成の実態を顕微鏡で観察します。ひとつひとつの細胞を同定してみましょう。その次に、精子形成実験の評価法について考えてみたいと思います。実験においては観察することが何よりも重要です。そしてその観察結果を評価することが必要です。さらには、観察法を改良してより正確な評価ができるようにする工夫が求められます。私たちの研究室ではGFPトランスジェニックマウスというマウスを使って、精子形成の評価を簡便かつ正確に行うようにしています。
精巣の再構成
生命現象の中で、再生という現象はとても興味深い現象です。損傷を受けたり、離断された組織が元の形に戻り、機能を取り戻す現象だからです。しかし哺乳動物の場合は、その再生現象は極めて限定された状況で観察されるのみです。私たちの研究室では、マウスの精巣においても再生現象が見られることを世界で初めて発見しました。しかも、生体の中でのみならず、体外においても、です。
まず、精巣を包む膜を剥がし、中に充満している精細管をほぐします。これを酵素液の中に漬けて処理しますと細胞がバラバラに離散してきます。つまり精巣組織が細胞というブロックに分解されます。もはや組織構造はありません。この細胞達を一か所に集め、おにぎりのような塊を作ります。そしてそれを上述した培養法に準じて、培養します。すると約10~14日間で精細管様の構造が再び構築されていることが観察されます。
バイオエキスパートでは、実習時間の都合上これらの実験の全体を実習することはできませんが、そのエッセンスを体験していただけたらと思っています。