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神経細胞の培養と突起伸長の観察(6月21日)
プログラム担当研究室
- 生体機能医科学研究室
脳や脊髄などにある神経細胞を取り出してシャーレの中で培養してみましょう。神経の細胞から軸索と呼ばれる突起が生えてきてどんどん伸びます。その様子を観察しながら、どのように伸びていくのか、そして、幾つかの物質を入れてみてそれに反応する様子も観察したいと思います。伸びたり縮んだりする反応の積み重なりで神経回路が出来上がる仕組みの一端を皆さんに観察して頂き、神経回路が出来上がる不思議を体験して頂ければと思います。
ニワトリ胚の脊髄後根神経節細胞の培養
ニワトリの卵は、皆さんよくご存知の通りですが、スーパーマーケットで売っているような卵は未受精卵です。交尾によって受精した卵は湿度の高い状態で時折くるくると回転させながら37℃に保温すると、21日目にふ化してヒヨコになって卵から出てきます。保温を始めると卵の中には哺乳類で言う胎児のように、卵胚が育ちます。保温を始めて7−8日目の卵胚を取り出して、脊髄の外側に飛び出た神経節(後根神経節)を摘出して簡単な処理を施してバラバラにすると、シャーレの中でその中に含まれる神経細胞を培養することができます(右図)。シャーレの中で2-3時間放置しておくと、神経細胞から細長い突起が出てきます。これは細胞で生じた微小な電気変化を次の細胞に伝えるための電線のような役割をする軸索と呼ばれる突起です。神経細胞を培養して、この軸索ができる過程を観察してみましょう。
神経成長円錐の運動(神経突起の伸長)の観察
細胞から生えてきた突起は1分間に1μm(1 mmの千分の一)くらいの速度で伸びていきます。伸長する突起の先端には、「神経成長円錐」と呼ばれる特殊な構造体ができます(右図)。手のひらを広げたような形をしていて、指のような細いスパイク状の突起は糸状突起と呼ばれ、周りの環境を探るセンサーのような役割をしています。あたかも昆虫の触覚のように周りを探るように動かしています。また、手の掌の部分は葉状突起と呼ばれ、突起を引っ張る機関車のような役割をしています。この「神経成長円錐」の運動の様子を観察してみましょう。
神経成長円錐が環境物質に反応する様子(軸索ガイダンス)の観察
脳や脊髄の内には、神経細胞の突起をよく伸ばさせる物質と、突起の伸びを止める物質の双方が存在しています。それらの物質を感受して、自らが進むべき道を探し出し、結合すべき相手の細胞を見つけ出すという「軸索ガイダンス」と呼ばれる現象によって神経回路が出来上がります。脳内にはNogo(No go!という意味で付けられた名前の物質)やSema3Aという神経の伸びを止めさせる物質があります。培養シャーレの中にNogoやSema3Aを入れてみて、神経の伸長が止まる様子を観察してみましょう。手のひらを広げたような形の神経成長円錐は、ぎゅっと退縮して針状の形に変化し、突起の伸長が妨げられます(右図)。神経再生医療では、このような反応を抑制する必要があり、私達の研究室ではそのような物質に対する反応を止める働きをするLOTUSという物質を発見しました。そのことについても少しご説明する予定です。
本バイオエキスパートを通して神経回路ができる仕組みの一端と、神経再生医療についてご理解頂ければと願っております。